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首都圏から気軽に訪れることのできる観光地として多くの人が足を運ぶ富士五湖エリア。中でも最大の面積をほこる山中湖は、年間を通じて様々な自然を感じることのできる人気スポットである。その湖畔、富士山を正面に望む絶好の地に建つのが「オーベルジュ 秋桜」だ。のんびり流れる時間と野菜の魅力を存分に生かしたフレンチが、今宵も訪れる者の心をとらえてやまない。

インタビュー

インタビュー

次はどんなお皿が出るのだろう!そんな「わくわく感」にあふれたフレンチをお楽しみください
オーナーシェフ

浅見紀之に聞く

オーナーシェフ 浅見紀之氏:

山梨県出身。アルバイトを通じて「料理を作る楽しさ」を知り、高校卒業後富士五湖エリアの新規開業リゾートホテルに入社。10年間修行を積み、千葉のレストランを経て古巣のホテルに戻ってパン作りを1年間学ぶ。その後縁あって山中湖に移り、「オーベルジュ 秋桜」のオーナーシェフとなる。

日本の象徴である富士山のふもと、標高1000メートルに位置し、古くから避暑地として開かれた山中湖エリアは、今も別荘や各種宿泊施設が並ぶ人気のリゾート地だ。この自然に恵まれた地で、絶品のフレンチを楽しめるオーベルジュとして高い人気を誇るのが「オーベルジュ 秋桜」だ。その魅力の秘訣をうかがうべく、オーナーシェフの浅見紀之氏の元を訪れた。

 

作り手の主張がはっきりと表れたお皿をお出ししたい

 

まずは料理に関してお聞きした。
「まず僕のスタイルとして、メニューは提示していません。もちろん不親切でやっているんじゃないですよ(笑)」
「お客様がメニューをご覧になると、『ああ、こういう物が出てくるんだ』というイメージが頭の中にできあがってしまいます」
「ですが、事前の情報がないと、『どんな料理が出るんだろう?』という、わくわく感のようなものが生まれます。僕はそれを大切にしたいんです」
「さらに言うと、僕自身がお客様にお出ししたメニューも書いていません」
長年に渡って素晴らしい料理を作られてきたのに、それはもったいないような気がしますが・・・
いったいどうしてなのでしょう?
「端的に言えば、料理というのは『一期一会』だと思うからです」
「食事というのは、ただお腹を満たしさえすればいいというものではありません。味はもちろんですが、その時の会話や音楽といった雰囲気までをも含めて楽しんでいただくものです」
「ですから、過去を追いかけるのではなく、あくまでもその時の雰囲気の中で味わっていただきたいんです。あの時の料理が美味しかった、ではなく、今日はどんな物が食べられるのかしら、という期待感をもっていただければと思います」

そんな浅見シェフの作られる料理の方向性はどのようなものなのだろう?
「特に大切にしているのは野菜ですね」
「野菜って、とかく添え物というか、脇役的な存在になってしまいがちじゃないですか。でも、僕は違うと思います」
「僕達の仕事はいわば『物作り』です。そういった部分の中で、野菜はいろいろと手のかけようがあり、そこに料理人の個性が表れるんじゃないでしょうか」
「お肉やお魚は確かに美味しいですが、調理法がある程度限られてくる面も否めません。それに対して、野菜は本当に面白いと思うんです」
「たとえば生で食べて美味しいというのもありですし、逆に火を入れることで劇的な変化を見せることもあります。しかもその調理法も、焼く、蒸す、煮るという部分で、変わってきますから。さらに言えば、わずかな火加減の差でも違ってくるんです」
それだけ野菜に対して思い入れの強い浅見シェフである。
さぞかしこだわりの品々をお使いのことであろう。
「いや、もちろん鮮度やクオリティには最大限の注意を払いますが、ごく普通に流通している物を使っていますよ」
え、そうなんですか?
意外な答えに面食らった。

「生産者や作り方などを重視するというのも、確かに1つのやり方ではあるでしょう。ですが、仮にそういった物でなくても美味しいのであれば、それをどのように調理するかというように考えた方が、僕は面白いと思うんです」
「たとえば、お客様が普通に買える野菜なのに、普段とはまったく異なる趣で出てきたらどうでしょうか? えっ、いつものあの野菜が、こんな風になるのっていう感動が生まれますよね」
「現にお客様からのご質問は、野菜に関する内容が圧倒的に多いです」
あえてブランド等に頼らない浅見シェフの姿勢に、真の意味でのプロ意識を感じた。
ただ、そういう方向性は、相当の手間がかかるのではないだろうか?
「確かに大変ですよ(笑)。でも、先程もお話したように、『物作り』ですから、自分がどう手を加えたかによってその一皿が生まれたのかというプロセスの部分が大切なんです」
「料理はあくまでも作り手の表現ですから、どういうふうにしてこうなったのかという、主張のようなものがないと面白くありません」
「特にフランス料理は、どれだけ手間がかかっているんだろう、ソースはどのようにしたのだろうという、見た目ではない奥行きにその魅力があると思うんです」
1つ1つの言葉に、料理を愛する気持ちが満ちあふれていた。

「これでいい」と妥協することなく、絶えず進化を続けたいと思います

引き続き、仕事に関する総論的な面についてお聞きした。
「あえて誤解を恐れずに言うならば、僕は100人のお客様がいらっしゃったとして、全員に満足していただこうとは思っていません。それは不可能なんです」
どういうことでしょうか?
「100人が満足する料理を作るためには、全体の平均値を上げていく必要があります。それは簡単に言ってしまうと、80点の料理を作るということなんですね」
「しかし、それはまだ僕の方に余力があるということではないでしょうか? 言い方を変えれば、妥協した部分があるということです」
「そういう仕事をするのであれば、とにかく全力を尽くして100点に近い料理をお出ししたいですね。それをどのように感じるかは、もちろんお客様の自由です。中には評価されない方もいらっしゃるでしょうが、それはやむを得ません」
とても潔い姿勢に圧倒される。

非常に高いレベルで、お客様を大切にされるお気持ちが強く伝わってきた。
「人間は自分に甘いところがありますから、妥協をし始めるとどんどん緩んでいってしまいます。『まあ、これくらいでいいだろう』って思っちゃうんですね」
「ですが、『現状維持』というのは妥協の産物に過ぎません。要は向上心がないということなんです」
「また、一方で『どうせ誰も自分の仕事なんか分かってはくれないんだ』という気持ちにも陥りがちです。そういう思いでやる仕事は、決していいものではありません」
「ところが怖いもので、そんな気持ちでやっている時に限って、きちんと分かっていただけるお客様がお越しになるんです。もちろんその方のリピートはありません。自分が妥協してしまったがゆえに、大切な出会いを失ったということです」
「ですから、常に全力で仕事をして、分かって下さる方がいらっしゃった時に、『ちゃんとやってるんだな』と感じていただけるようにしないと、結局自分にとってマイナスになると思うんです」
その秘訣のようなものはなんでしょうか?

何よりも自分自身が楽しんで仕事をすることですね」
「考えてもみてください。僕が『面倒臭いな』などと思いながら作った料理を、お客様が『美味しい』と感じるでしょうか? そういう気持ちは、必ずお皿に出るものなんです」
「そうであるならば、『今日はこんなふうにしてみよう』『どうしたら喜んでいただけるだろう?』というようなスタンスで料理をした方が、絶対にいいと思います。印象がまったく違うでしょう」
自らが楽しむ。
言うのは簡単だが、なかなかできることではない。
「お客様の反応というのは、まさに千差万別です。したがって、こちらが追い求める部分ではないと思います」
「それならば、自分がベストと思う表現をして、何よりも自らが楽しいと思えるようにした方がいいんじゃないでしょうか」
変な話ですが・・・
浅見シェフが笑いながら言葉をつないだ。
「夜はバータイムもやっていて、お客様がお帰りになるのが1時過ぎなどという日も珍しくありません。僕も一緒に飲んでいて、先にうとうとするなんてことも・・・(笑)」

「ですが、どんな時でも朝はすっきり目が覚めます。起きるのはまったく苦痛ではありません。『今日は何があるんだろう』と思うと、うれしくって仕方なくなるんですね(笑)」
こういう積極的な姿勢が、訪れる者に元気を与えてくれるのだろう。
お話を聞く中で、こちらも自然と表情が緩んでいくのがよく分かった。

「楽しかった」「また来たい」というお声が何よりの励みです

最後に、「秋桜」での過ごし方についてお聞きした。
「まず、あまり先入観にとらわれず、なるべくニュートラルなお気持ちでお越しいただきたいですね」
「もちろん期待をしていただくのは大歓迎です。ただ、インターネットなどで得た情報だけを頭に詰め込んで、という期待感は、どうしても現実との間にギャップを生むことになります」
「そういう方って、お見えになった時点で何となく分かるんですね。肩に力が入っているというか・・・」
確かに、私達は氾濫する情報に振り回されがちだ。
しかし、それでは純粋な感動ができないおそれがある。
「一方で僕自身が張り詰めた顔をして仕事をしていたら、やはりお客様に伝わってしまいますよね。初めての方であっても、入られた瞬間にぴんとくるでしょう」
「そんな空気感では、とてもくつろいでいただけることはできません。ですから、僕はチェックインの時から、絶えず笑顔でいるようにしています。もちろん無理に笑っているわけではありませんよ(笑)。自分自身が楽しんで仕事をしていますから、自然と笑顔になるんです」
そういう浅見シェフの気持ちが、何とも言えない優しい空気感を生んでいるのだろう。

「もちろんお食事中も同じです。単なる栄養補給ではありませんから、味だけではなく場の雰囲気も含めて楽しんでいただきたい。ですから、最低でも2時間ぐらいかけて、ゆっくりお出しします」
「フランス料理ということもあって、たとえば『マナー』を意識される方もいらっしゃいます。ですが、まずはご自身が楽しんで召し上がっていただきたいですね」
「マナーって、要は周囲から見てどうかっていう問題だと思うんです。ですから、いいんです、別にカトラリーの使い方が違ったって。それ自体が、他のお客様に迷惑をかけるわけではありませんから(笑)」
食に限らず、マナーについてはいろいろと話題になっている。
しかし、浅見シェフのおっしゃるように、基本は周囲に迷惑となるかどうか、なのだ。
事の本質を鋭く見抜き、シンプルに表現される浅見シェフに、まさに脱帽の思いだ。

「もちろん、それぞれのお客様の過ごされ方は自由です。ただ、僕の思いとしては、せっかくおみえになったのであれば、ぜひ『非日常感』を味わっていただきたいんです。つまり、普段とは違う過ごし方ですよね」
「ですから、本当は部屋にテレビも置きたくありません。あると、ついつけちゃうんですよね。また、お食事中にカップルの方が2人でスマホを出して、別々に見ているというのも寂しい光景だなって思っちゃいます」
「宿というのは、それだけで1つのエンターテイメントなんです。だから、美味しいのはもちろんですが、何よりお客様が『楽しかったね』と言いながらお帰りになっていだたけることを目指しています」
 

最後の言葉に、浅見シェフの思いが集約されているような気がした。
充実のディナーを満喫した後は、バーでのくつろぎ時間となった。
お酒も交えて一段と話も弾み、心がどんどん軽くなっていくのを実感する。
気がつくと日付が変わっていた。
お疲れのところ遅くまでお付き合いいただいたことに改めてお礼を述べ、部屋に戻る。
そして翌朝、ダイニングには満面の笑みを浮かべたシェフがいらっしゃった。
何ともぜいたくな1日の始まりである。

食の世界

食の世界

ごく普通の野菜をどのように変身させるか、楽しみながら作っています

料理

ディナーはフレンチのコース料理。お客様との触れ合いを大切にする浅見シェフ自らがサーブしてくれるため、ただお腹を満たすだけでなく、いろいろなお話を聞きながら料理を楽しむことができる。特筆すべきは野菜料理。10種類以上がふんだんに使われ、それぞれの個性を最高に引き出す調理法で供される。サラダなど、野菜メインの料理はもちろん、魚や肉と1つになって互いの魅力を高め合うお皿は、まさに絶品の一語に尽きる。

食材

豊富な経験を生かして、高品質の物を取り寄せている。たとえば肉はホテル時代から交流のある業者より、主として九州産黒毛和種ロースのA4クラスを、輸入食材は、東京、大阪をはじめ、信頼のおける品を各種のルートを通じて仕入れている。一方野菜に関しては、誰もが普通に入手できる物を使用。あえてブランドや生産者に頼るのではなく、長年に渡って野菜を見続けてきた浅見シェフ自らが、厳しい目でクオリティの高い品を選んでいる。

 

お酒

お酒は各種そろっているが、フレンチということで、やはりワインの充実ぶりが光る。価格設定が手頃なのもうれしい。約800本のストックが、セラーで丁寧に保管されている。特に地元山梨のワインは、大御所の丸藤葡萄酒工業を筆頭に、シャトー酒折、金井醸造所、四恩醸造、旭洋酒……と、伝統ある所から最近特に頑張っている若手の方々まで幅広くそろっている。またフランス産も豊富なので、飲み比べをするのも楽しいだろう。

食空間

広々としたダイニングは優しい木の温かさに包まれて、心底リラックスして食事を楽しむことができる。暖色系の照明が、シックな空間を演出してくれる。天井 が高く、窓もたくさんあるので、開放感にあふれているのも魅力。天気がよければ、富士山を見ることもできる。また、ディナーの後はバータイムになり、一層落ち着いた雰囲気になる。最高の料理の余韻を、好みのお酒とともにじっくりと味わいたい。
 

スイーツ

ディナーの最後を飾るスイーツは、オーソドックスからモダンなタイプまで、甘さではなくどちらかというとほろ苦さのような旨みを生かした仕上がりになっている。たとえばアイスクリームは、卵黄を使っていないので、すっきりした味わいだ。そのため、普段スイーツをあまり口にしない人でも、すんなりと食べられるのがうれしい。はっと息を飲むような美しい彩りや、見た目も鮮やかな飴細工など、浅見シェフの豊かな感性の織りなすお皿を心ゆくまで楽しみたい。

メニュー

朝食〜PetitDejeuner
  • こんにゃくのピリ辛煮

  • きんぴら

  • 南瓜の煮物

  • ふろふき大根

  • 焼魚

  • だし巻き卵(忍野産卵)

  • ご飯

  • 味噌汁

  • 香の物

  • ヨーグルト

  • ぜんざい

(メニューは一例につき、変更する場合がございます)

夕食〜Dinner
  • パルミジャーノ・レッジャーノのカナッペ

  • 焼き野菜のサラダ 春菊のソース

  • 帆立貝の香草パン粉焼き      長ネギとオリーブのソース

  • お口直し

  • 特選和牛のサーロインステーキ
    バルサミコソース

  • 自家製スイーツ

  • パン

  • コーヒー又は紅茶

(メニューは一例につき、変更する場合がございます)

アルバム

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