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山の中にひっそりとたたずむ女神湖。そこから歩いて数分の所に建つ白亜の殿堂が、「ホテルコロシアム・イン・蓼科」だ。内湯の温泉と季節によって替わる外湯、貸切風呂。アロマテラピーに岩盤浴。そして豊かな自然に囲まれたレストランでいただく至高のフレンチに魅せられたお客様が、繰り返し訪れるオーベルジュである。長野新幹線「佐久平」、中央本線「茅野」と、二方面からのアクセスがあるのもうれしい。

インタビュー

インタビュー

地元の食材やワインの魅力を最大限に引き出し、より多くの方にフレンチの魅力を知っていただきたい
シェフ

宮武英雄氏に聞く

シェフ 宮武英雄氏:

1974年福岡県出身。都内のレストランでの修行を経た後、2010年12月より 「ホテルコロシアム・イン・蓼科」の料理長を務める。
※現在のシェフは安藤 孝氏で、本レポートは訪問時の内容となります

白樺林が随所に広がる信州・白樺高原。山菜や茸採り、避暑、ウィンタースポーツと1年を通じていろいろと楽しめる人気エリアでありながら、静かな高原の空気感を今なお色濃く漂わせるこの魅力的な土地で、多くのお客様の心をとらえて離さないのが「ホテルコロシアム・イン・蓼科」だ。2012年、開業25年を迎えリニューアル、一段とその魅力を深めたオーベルジュで腕をふるうシェフ・宮武英雄氏に、料理を中心にいろいろなお話をうかがった。

 

生産者や作り手の方々と直に触れ合える、地方ならではの魅力を存分に味わっていただきたい

 

料理に関して、まずは食材の話をお聞きした。「フランス料理を提供していますから、やはりシャラン鴨のようなフレンチを代表する食材を使います」「ですが、一方で地元にもポテンシャルの高い素材はたくさんあります。たとえばジビエのシーズンでしたら、鹿が代表的な物でしょうか。もちろん他にも茸や野菜、果物と、バラエティ豊かです」「そういう地の利を生かして、フランスと長野のコラボのような感じでやっていきたいと思っています」

 

定番のお皿のようなものはあるのですか?

 

「定番料理は、あえて作っていません」宮武シェフはきっぱりとお答えになる。

 

それはどうしてなのでしょう?

 

「入って来る素材は季節により変わります。また、もちろん高い質の物を取り寄せますが、その時々によって状態も微妙に異なります」
「それを、あらかじめ決めた料理にはめこんでしまったらどうでしょうか? 素材の持つ良さを十分に引き出せないと思います」
「目の前の素材をどうやって生かしていけるのかということは、料理人として大変勉強になります」
「また、そういう姿勢を通じて、生産者さんの真摯な気持ちをお客様に伝えることができると思うのです」

確かに私達は生産者の方々と直接お会いできる機会はまずない。苦労して収穫された思いを料理によって伝えるのも、シェフの重要な仕事なのだ。

 

「このように地方で料理を作る利点というのは、生産者さんと直に触れあえることです」
「たとえば、農家の方の所へ直接足を運び、どのような状況でその野菜が収穫されるのかということを、生で感じられるのです」
「そういう現場の空気感から学んだことを、今度は料理に生かしていくようにしています。また、召し上がっていただいたお客様がその野菜に関する情報を欲しいとおっしゃるのであれば、可能な限りお伝えします。一般のお客様も、直販やネットで買える時代ですから……」

地元と言えば、ワインに関しても信州産の充実ぶりはすごいですね。

 

「そうですね。僕自身、ここに来て初めて信州ワインの魅力に気づきました。フランスやイタリアといった、いわゆる本場の物と比べても遜色ありません」「もちろんお客様の好みもありますが、せっかくここまでお越しになっているのですから、ぜひとも信州ワインと共に料理を味わっていただきたいと思います」

 

いわゆる「マリアージュ」を重視されているということでしょうか?

 

「はい。信州ワインの特徴は、癖の少ない飲みやすさだと思います。したがって、合わせる物によって印象が大きく変わりかねません」
「そこで、マリアージュには特に意識を向けています。ですから、たとえばお客様がお飲みになっているワインに合わせて、仕上げを調整するというような配慮をします」
「そのためには、当然どの方がどのようなワインを楽しんでいらっしゃるかということを、僕が把握しなければいけません。ですから、そういった情報は逐一伝えてもらい、そこで最も合うようなスタイルで料理を完成させます」
「もちろん品によってはそれほど大きな加工はできませんが、できる限りのことはします。ソースを少し変えるだけでも、ずいぶんちがってきますから」

ですが、それにはシェフ自身がワインをご存じでないといけませんよね?

 

「当然です。僕の中にそのワインに関する知識がなければ、どうすることもできません」 「味はテイスティングすればいいのですが、それだけで信州ワインの魅力を伝えきれるかどうか、疑問です。そこでやはり生産者さんの所に足を運んで、直接いろいろなお話をうかがっています」「そういう中で感じたのは、それぞれの作り手さんのワインにかける強い思いです。大量生産はできないという厳しい状況の中で、いかに素晴らしい物を作るか、その情熱には胸を打たれました」

 

ワインに関しても宮武シェフは、生産者とお客様をつないで下さっているのだ。

たとえ直接お会いできなくとも、このように心と心はつながっていく。ともすれば見失いがちな「地産地消」の本質を、宮武シェフのお話で再認識した。

 

 

フレンチの技法を大切にしつつ、決まりごとに縛られない料理を作りたい

ところで、ディナーの際に印象的だったのがグラニテだった。グラニテと言えば「氷菓」のイメージが強いが、供していただいたのはそれとはまったく違う物であった。 これも、生産者の方とのつながりの中で生まれた一品ということである。

 

「湯葉を作られている方がいらっしゃるのですが、話を聞くと、生産過程で出る『湯葉乳』は他に使い道がないので、捨てるしかないとのことでした」
「ですが、味はしっかりしています。そこで僕は食材として使えるのではないかと考えました」
「そこで湯葉乳をフランにして、柚子のソースと組み合わせてみたのです。季節によっては、ワサビのオリーブオイルにすることもあります」

いわゆる「グラニテ」とはずいぶん趣が違いますね。

 

「はい。ですが、そもそも『お口直し』の役割は何でしょう?魚から肉に移る時に、ワンクッションを置くということではないでしょうか」「そうであるとするならば、絶対に冷たい物でなければいけないということにはなりません。要は、そこで1度お口の中をリフレッシュしていただくことが重要なのです」「これはフランスをはじめとして、実際にいろいろなレストランで僕自身が食べた時の実感です。お口を直していただくという原点から考えるなら、必ずしも氷菓である必要はないと思ったのです」

 

いただいたグラニテは湯葉乳の優しい味と柚子の風味が絶妙で、口の中がさっぱりした。オペラで言うなら、前菜は序曲、グラニテは間奏曲というところであろうか。口にしながら頭の中に甘美なメロディーが流れ、フィナーレへの期待が高まるのが実感できた。グラニテ=氷菓という固定観念に縛られないシェフの感性に脱帽である。

 

「あの料理は、湯葉または豆腐と相性がいい物は何だろう、と考えたのが出発点でした」「普通に考えれば醤油ということになるのですが、やはりフレンチではなかなかそうもいきません」「そこでいろいろ考えた末、ワサビや柚子でアクセントをつけるという結論に達したのです」


食材に関して、普通の食べ方を考え、それをフレンチに落とし込んでいく、ということでしょうか?

「そうですね。もちろんフランス料理には伝統がありますから、それは守らなければなりません」
「ですが、基本的に日本人のお客様に召し上がっていただくわけですから、フレンチの技法を生かし、なおかつお口に合う物という観点も重要だと思うのです」
「セオリーは重要です。しかし、それにこだわり過ぎていては、進化がありません」

 

本質をおさえながら、自らの感性にしたがってより完成度の高い料理を作り出す宮武シェフ。
こうしてフランス料理の技法と信州の素材が一体化し、見事なお皿が紡ぎ出される。
昨今の安直な「コラボレーション」とは明らかに質の異なる料理の数々。
その感動を求めて、今日も多くのお客様が足を運ぶ。

食べる立場から考えた料理をお出しするようにしています

料理の「各論」に属するお話を伺う中で、シェフがお考えになる「総論」にも興味がわく。 その点から、最後にいろいろとお聞きした。

 

「そうですね、たとえばカトラリーですが、ナイフやフォークがずらりと並ぶのは確かに見栄えはいいでしょう」「ですが、お客様によっては堅苦しさを感じられるかもしれません。ですから、僕はお箸も出すようにしています」「実際に使うかどうかは別にしても、普段慣れている物がセットされていると、どこか安心感が出ると思います。それは自分が食べに行った時にも感じることです」

 

お客様の立場で考えるのが重要ということでしょうか?

 

「はい。ですから、料理に関しても『自分が食べたい物を作るように』と指導しています」「たとえば全体の量やバランスにしても、自分が実際に食べに行ったとして、これでどうだろうかという視点で考えるのが大切です」「もちろんそういう感性を養うためには、自らがレストランに足を運ばなければなりません。自分の所だけという狭い了見ではいけないというのもありますが、僕は『暇があったら食べに行け』と言っています」

 

こういう地道な努力の積み重ねが、素晴らしい料理と食空間を醸し出すのだと納得した。

 

「それと、やはりスタッフ一同が共通の思いを持つことも重要だと思います」「料理を作る立場というのは、言わば『裏方』です。お客様の召し上がっている姿を直に見ることはできません」「そこで、料理を作る中でその日のお客様のご様子を想像して、仕上げを調整する必要があります」

 

先程おうかがいした、ワインに合わせた料理の微調整などが、その一例でしょうか?

 

「その通りです。ですが、何の根拠もない『想像』では当然意味がありません。そこでギャルソンにお客様の具体的なご様子を逐一報告してもらい、それをさらに発展させていくようにしています」「食空間において料理は確かに主役でしょう。ですが、それがすべてだとは思いません。ギャルソンやサービス係がいて、料理人の仕事は完結するのだと思います」

「昔、先輩からこういう教えを受けました」「料理人がどれほど腕をふるっても、美味しさは60%までにしかならない。それを100%にしてくれるのはギャルソンの力なんだ、というのです。まさにその通りではないでしょうか?」

 

確かに印象に残るレストランには、必ず素晴らしいギャルソンやソムリエがいる。

極端な話、料理の仔細は忘れても、彼らの印象は強く残っていることすらある。

 

「であるからこそ、スタッフと自分は共通の認識を持たなければなりません」「料理にしてもそうですが、自分で実際に食べてもいないのに、お客様にきちんとサーブできるでしょうか? 味を見ていない物を、ただ口先だけで説明しても、おそらく何も伝わらないと思います」 「口では上手く言えても、表情や態度に実感のなさが表れるものなのです。やはり実体験をするかどうかで雲泥の差が出るんですね」「ですから、僕は必ずギャルソンにも食べてもらい、彼らが美味しいと思う物をお客様に提供するようにしています」

 

どの世界でもそうだが、真に力のある者は決して威張らず、驕らず、周囲の人間を大切にする。そして、そうした気持ちや生き様は、恐ろしいほど端的に作り出した物に反映される。言葉で繕うことはできても、作品は決して嘘をつかないのだ。 宮武シェフの料理が、美味しいだけではない何か特別な物を感じさせてくれた背景が、そのお人なりに触れることでよく分かった。 これからも、いろいろな方々の思いをつなげ、それを最高のお皿に仕立てて私達に感動を与えてくれることだろう。
 

食の世界

食の世界

お客様に「また来たい」と感じていただくことが、価値のある料理人の証だと思います

料理

ディナーは地元を中心にした上質の食材をふんだんに用いたフレンチのコース。感性豊かな宮武シェフは伝統的な技法を守りながらも、ちょっとした遊び心や意外な組み合わせといった柔軟な発想も大切にしていて、両者が融合した見事なお皿は、いただく都度新たな感動を与えてくれる。また、グリーンシーズンのみの営業だが、古民家風の「杣人の館」では、伝統的な信州地方の料理を楽しむこともできる。

食材

注目すべきは豊富な地元食材だ。たとえば野菜は朝、地元の契約農家に足を運び、自ら収穫した物を使用。魚は長野県のブランドである「信州サーモン」「信濃ユキマス」、そして肉はやはり地元ブランドの「信州和牛」「蓼科和牛」、フレンチの醍醐味であるジビエには地元猟友会が捕獲した鹿、さらに秋の味覚の王者である松茸も地元産を限定使用という贅沢さである。加えて、伊豆川奈港や鳴門海峡などの漁師直送鮮魚、安全な「SPF豚」、フランスからのフォアグラやシャラン鴨という錚々たる顔ぶれだ。

お酒

フレンチということで、ワインの充実ぶりは出色。特に信州ワインのラインナップは他の追随を許さないものがある。おすすめは信州産のブドウのみを使用したプライベートブランド。赤は信州最大の産地である桔梗ヶ原で収穫されたメルロー種100%、白は善光寺平、松本平産のシャルドネ100%である。今後もさらなる拡充を目指し、地元ワイナリーと折衝を続けている。また、フランスを中心とする外国産も豊富なので、飲み比べをするのも楽しいだろう。

食空間

180度ガラス張りのメインダイニング「パノラマ」は、開放感あふれる明るい空間となっている。周囲の白樺林、季節には鮮やかに彩を添えるレンゲつつじ、幻想的に流れる霧、木立の間に垣間見える夕日などが、一段と雰囲気を盛り上げてくれる。また、別棟「杣人の館」は、古民家を利用した趣ある和食処。囲炉裏を囲んでゆったりと食事を楽しみたい。なお、こちらは季節営業で予約制なので、利用に際しては要確認。

スイーツ

長野と言えば我が国有数のフルーツ王国。もちろんその恵みをふんだんに使っている。代表格であるリンゴをはじめ、ブルーベリーなどそれぞれの季節に応じた地元産の果物を惜しみなく使用する贅沢さだ。また、デセールはあくまでもコース料理の一皿であるということで、メイン料理とのバランスが熟慮された物となっており、食べ終えた時の満足感に誰もが言葉を失うことだろう。

メニュー

朝食〜PetitDejeuner

ビュッフェスタイルでお楽しみください

  • ジュース

  • サラダ

  • フルーツ

  • 有機栽培コーヒー

  • 紅茶(ロンネフェルト社製)

  • オリジナルブレンドハーブティー                       メインディッシュをお選び下さい        

  • 【地元有精卵の卵料理・お魚料理】

  • プレーンオムレツ
    又は
    温野菜のポトフ仕立て 温泉玉子添え

  • 稀少アマゴの一夜干し

  • 焼きたてパンと本日のスープ
    又は
    信州浅科 五郎兵衛米のお粥とお味噌汁

(メニューは一例につき、変更する場合がございます)

夕食〜Dinner

  25周年記念 シェフ特選ディナー

 

  • 蓼科自然卵の茸風味と信州ブランド鱒
    “信州サーモン”

  • 北海道産の秋刀魚と里芋のテリーヌ 秋の装い

  • フランス産フォアグラのポワレ   自家製ブリオシュ添え

  • 高原野菜入り黄金シャモのコンソメスープ
    松茸風味

  • 漁師直送鮮魚を本日のスタイルで

  • お口直し

  • 秋の味覚 稀少地産茸とフランス産“シャラン鴨”のロースト
    又は
    信州特選ブランド“信州和牛”リブロースの網焼き
    サフラン風味のリンゴのコンポテ
    又は
    厳選素材“信州和牛フィレ肉”をフランス産トリュフが香るソースにて[+2,000円]

  • 秋の果実 梨のクレームブリュレ 自家製アイスと共に
    又は
    立科“五輪久保”産リンゴのソテー リンゴ蜂蜜のムースと

  • 有機栽培コーヒー
    又は
    紅茶(ロンネフェルト社製)
    又は
    オリジナルブレンドハーブティー

(メニューは一例につき、変更する場合がございます)

アルバム

アルバム

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